文系の場合、そもそも卒論とは? 卒論は何を書けばいい?
卒業論文は、文理を問わず大学生にとって通過儀礼の一つとされています。しかし、理系分野の実験や調査に比べると、文系分野の卒業論文ははっきりとしたイメージが掴みづらい面があります。一体、文系学生が卒論でどのようなことを行えばよいのでしょうか。本記事では、文系の卒論の概要と、適切なテーマ設定の仕方について詳しく解説します。
文系卒論の目的と役割
まず、文系の卒論の目的と役割を確認しておく必要があります。大雑把に言えば、卒論の目標は「学問的な問題について、自身の考えをまとめ提示すること」だと言えるでしょう。そのためには、以下の3点が重要となります。
- 問題意識と課題を明確化する
- 関連する先行研究や理論を渉猟する
- 自身の主張を筋道立てて展開する
つまり、文系の卒論は「課題発見能力」「調査能力」「考察力」「文章力」といった、文系の基礎的な学力を試される機会とも言えます。自ら題材を設定し、調査と検討を重ねた上で、独自の見解を論理的に紡いでいく作業を通して、学生の総合力が問われるわけです。
一方で目的とは裏腹に、文系の卒論には賞味期限がありません。画期的な発見や斬新な理論の提示を求められることはありません。むしろ、この時点での「課題への取り組み姿勢」に重きが置かれているのが実情です。研究者を志す学生が卒論で大発見をするケースは極めて稀で、大多数の文系学生にとって卒論は課題への真摯な取り組みを評価される機会なのです。
適切なテーマ設定が肝心
文系の卒論において最も重要なのは、テーマの設定方法です。自分なりの問題意識や関心から、調査に値するテーマを見つけ出さねばなりません。しかし、同時にそのテーマが現実的に扱える範囲内に収まる必要もあります。
テーマ設定の際に気をつけるべきポイントは、以下の3点です。
- 自分の関心と問題意識を引き出す
- 先行研究を参照し、新規性を確認する
- 扱える範囲のテーマに的を絞る
関心のあるテーマを設定することは、卒論作成へのモチベーションを保つ上で重要です。しかし同時に、自身の力量を超えすぎるテーマは避ける必要があります。大学生にできる範囲内のテーマに留まるよう心がける必要があるのです。
また、先行研究をしっかり確認し、自身の新規性を打ち出せるテーマを見つけることも欠かせません。これまでの研究とは違う、自分なりの新しい切り口を設定できなければ、卒論としての価値が乏しくなりかねません。
具体的なテーマの設定方法としては、以下のようなアプローチが有効でしょう。
- 授業で学んだ理論や概念を発展させる
- 身近な事象や社会問題に新たな視点を投げかける
- 異なる分野の理論やアプローチを組み合わせる
- 文献や資料からヒントを得る
このように、自分の知的関心を叡智や創意工夫を重ねて具現化し、現実的な範囲に絞り込む。この作業を丁寧に行うことで、自身の力量に見合った卒論のテーマが設定できるはずです。
卒論での主な作業内容
テーマが決まれば、あとは本格的に執筆作業に取り掛かります。文系卒論での主な作業は、大まかに以下の3つに分けられます。
- 文献や資料の渉猟・収集
- 自身の主張やアイデアの検討
- 論文の構成と執筆
文献や資料の収集は、自身の主張を展開する上で重要な手掛かりとなります。先行研究や理論、さまざまな事例を参照しながら、自身の考えを掘り下げていきます。その過程で、文献を批判的にとらえ、新たな視点を提示する重要性にも気づかされるでしょう。
一方で肝心なのは、自身の主張をいかに筋道立てて展開できるかです。課題意識や主張を核に、論理の積み重ねを行っていきます。その際は常に全体の構成を意識し、首尾一貫した議論となるよう心がける必要があります。
また、アイデアの検討と並行して、論文の構成作りと執筆を進めていきます。結論部から書く方が分かりやすいでしょう。できるだけ簡潔明瞭に論を展開し、一定の分量に仕上げていく作業となります。
ゴールは「一応の完成形」
最後になりますが、文系の卒論には発展の余地があることを自覚する必要があります。学生の力量を超える完璧な論文を求められているわけではありません。大切なのは、一所懸命に取り組み、「一応の完成形」を仕上げることです。
不明な点があれば遠慮なく指導教員に質問し、アドバイスを仰ぐことをおすすめします。同じ道を歩む友人とも意見を交わしながら、切磋琢磨していくことが極めて大切です。
卒業後、その後の研究生活や社会生活の中で、さらに考えを深めていく機会は必ず訪れるはずです。大学時代の「卒論」は、そうした今後の学びの礎となる作品だと捉えることができます。一生懸命取り組めば、必ず充実した論文が完成するはずです。
文系の卒論は、学生時代に身につけるべき「問題発見力」「調査力」「論理的思考力」「文章力」といった基礎的な力の具現化ともいえる作品に仕上げるべきです。